海坊主のたたり海坊主のたたり


「お盆の十六日の夜、航海すると、たたりが おこる。」
 今は、耳にすることもないが、昭和のはじめころまでは、
お年寄りが話してくれました。
 これは、ある改良船 (かつおをとる船のこと)が、
広い海に漁に出たときの話です。
ある年の盆の十六日に、海辺では、年寄りの
漁師と若い漁師が、話合っておりました。
「十六日は、仏まつりのしまいの日だ。
仏まつりをやりっぱなしで出ると、よくないことが起きるので、
やめたらどうか。」と年寄りの漁師が、
忙配そうな顔で若い漁師に言っているのです。
「そんなことなどあるものか。この静かな海なぎをみれば、わかることだ。」
と」言って、年寄りの漁師の止めるのもかまわず、
とうとう船を出しました。けれども、船が沖に出たころには、
夜の航海となってしまいました。当時の漁船は、軽便型と言われ、
和船と同じ型の三十トンぐらいの船でした。
沖を航海するときは、機関のカを助けるために、
大きな帆を張って、航海をしたのです。
船が灘(波があらくて、航海に困難な海)をわたっていたころです。
風をいっぱいはらんだ帆に突如、大きな坊主(海坊主あるいは
餓鬼坊主とよんだ)の姿が、海の上に浮かび
出てきました。そして、「桶を出せ!桶を出せ!」
と、くりかえし、わめきたてました。桶を出すと、
坊主が海水をくみ入れ、船が沈められる、
という話をきいていたので、漁師たちは、
「それ、海のたたりだ。海坊主が出た!」
と、おののきながら、「桶を出すな、桶を出すと、
船が沈むぞ。残っている食べものを、
ありったけ、海に投げろ!」とさけびました。
みんなは、おひつの飯や、その他の残りものを、
海に投げ込むと海坊主の姿が消えたということです

賀茂村教育委員会

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