賀茂村の民話  経石

経石(きょういし)

宇久須川の上流、神田(じんで)の里の家並みが尽きるあたりから約500メートルほど行くと、

川中に経石と里の人がよんでいる大きな岩がある。

宇久須川の川中にある岩としては最大なもので、岩の上の部分は平らになっていて

、松や雑木などが生えている。またさの根本には石こくや岩松なども生えている。

そして岩の根方は川の流れにえぐられて淵となっている。

昔ある年の夏ね幾日か旱(ひでり)が続き、稲は枯死寸前となったが、

一向に雨の降る気配がない。そこで里人たちは、とある寺の住職に頼んで、

この岩の上で雨乞いをすることになった。

和尚は法衣に威儀を正して、数日の間お経を唱え続けた。

すると岩の根の淵から大きな竜がかけ昇ったかと思うと、一天俄にかき曇り、

雷鳴がとどろき渡り、大雨が降り出したことで、心配されていた稲作も畑のものも、

それからは順調に育ち、豊作となったということである。そのときから誰いうとなく、

その岩を経石というようになった。神田の里を離れて、西天城高原へ行く道に

差しかかると間もなく、左側の川中に、その巨石は今も厳としてそこにある。


賀茂村教育委員会編集 賀茂村の伝説より

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